先進理工学部長・研究科長からのメッセージを掲載しています。様々なことに挑戦できる充実した環境を先進理工では整えています。

教育理念・目的学部長室から

学問の基礎から、独創的研究の実行能力までを身につける場

早稲田大学 先進理工学部長・研究科長
生命医科学科 教授

朝日 透

Toru ASAHI

Q

先進理工学部の特徴を教えてください。

自然科学をベースとする学術分野、すなわち物理学、化学、電気・電子、生命科学を教えるとともに、それらを社会の役に立ち、人類の平和や繁栄に貢献するような形に発展させるための学問を教えています。そして、それらの学問に基づく先端かつ実践的な研究を展開しています。

教育内容の一番の特徴は、先端の科学も取り入れた重厚な実験科目群です。理工学術院の3学部(先進理工学部、基幹理工学部、創造理工学部)に共通することですが、まず、どの学科の学生も物理学、化学、生命科学など基礎的分野の実験科目が必修となっています。その上で、物理系の学科なら物理系の専門実験、化学系の学科なら化学系の専門実験というように、学科ごとの専門実験が必修となっており、将来、理論や計算などに進む意向の学生も、実験を通して専門分野の基本的な技量を実践的に学びます。

学部では、座学と豊富な実験群によって一つの分野を深めますが、大学院に進んだときには、それをさらに深掘りするだけでなく、学際的な研究に取り組むことも可能となっています。複数の分野にまたがる専攻もありますし、共同大学院で他大学の専門性の高い教員から教育・指導を受けられる仕組みも整えています。つまり、大学院では自分の学びたいこと、やりたいことを縦と横に広げられるわけです。

アカデミアに限らず、産業界でも役立つスキル

Q

研究活動を通して、学生はどのようなことを身につけていきますか?

先進理工学研究科には、修士課程・博士後期課程と、5年一貫制博士課程があり、学部生には大学院へ進むことを強く推奨しています。実際に大学院進学率は非常に高く、その中で博士学位の取得を目指す学生の割合も比較的高いです。

このような背景から、学部4年生の卒業研究は、最先端の研究、特に独創的な研究に取り組めるようにするための訓練と位置づけています。卒業研究では、指導教員や院生の指導のもと、研究テーマをどのように設定するかと、その研究をどのように進めるかを学びます。3年生までの実験や演習とは異なり、独創的な研究の答えはまだ誰も知りません。確固たる道しるべがない中で、自分がやりたい研究を行うためには、それまでに身につけた知識と技量をもとに自分で考えて、新しい実験装置やプログラムをつくったり、新しい解析方法を考えたりしなければなりません。こうしたことを繰り返す中で、独創的な研究を行う能力が身についていきます。

大学院では、研究成果を国内外の学会やシンポジウムなどで発表する経験を通してプレゼンテーション能力を磨くことができるほか、コミュニケーション能力、研究倫理の教育も重視しています。こうした能力は、アカデミアで研究を続ける場合に限らず、産業界で活躍する場合にも役立つトランスファラブルスキル(transferable skill、転移可能な技術)となります。

分野を広げるとともに、研究者育成の仕組みを整える

Q

今後の展望を教えてください。

1つめは、自然科学と情報科学の融合分野や、ナノテクノロジーや量子テクノロジーを活用した融合分野を強化していくことです。たとえば、先進理工学部・研究科ではこれまでにも、バイオインフォマティクス、ケモインフォマティクス、マテリアルズインフォマティクスといった融合分野の教育・研究を進めてきましたが、そこにAIを中心とする最新テクノロジーを取り込んでいきたいと思っています。さらに、いわゆる理工系以外の知識・素養も踏まえ、総合知を活用した研究が生まれることを期待しています。

2つめとして、博士学位を目指す学生に、俯瞰力や、海外の学生や研究者と渡り合えるような能力を身につけてもらうための機会を増やしたいと考えています。先進理工学部・研究科のみならず、本学は多くの公募型研究プロジェクトや人材育成プログラムに採択されており、これらを活用することで高度な人材育成を実現しています。有識者によるセミナーや公開シンポジウムを独自に開催することで、その体制をさらに強化できればと考えています。

3つめは、コロナ禍で身近になったオンライン・コミュニケーションツールの活用です。教育においては、対面授業とオンライン授業を相補的に使って、教育効果を上げていきたいと思っています。研究においては、オンラインによって、海外の学会やシンポジウムへの参加、海外の研究者との交流、国内外の企業との接触などの際のハードルがぐんと下がり、限られた資源と時間を有効に使えるようになりました。海外の研究者との連携や協働を通して指導やアドバイスを得られるよう、オンライン中心であっても対面する機会を一度持つなどの留意点を伝えた上で、学生たちにオンライン・コミュニケーションツールを活用するよう、推奨していきます。

アントレプレナーシップをもつ人材を増やしたい

Q

在学生や受験生へのメッセージをお願いします。

先進理工学部では、各学科の分野について、真理の追究に必要な基礎も、自然科学に基づいて科学や技術の課題を乗り越えていくための実践的な基礎も学ぶことができます。そして、大学院に進めば、得られた研究成果を学術論文や国際会議を通じて国内外にアピールするなど、国際的に自分を試す機会が用意されています。こうした教育・研究に魅力を感じ、自分の強みを伸ばして独創的な研究をし、世界に羽ばたきたいという志と心意気を持っている方たちは、ぜひ来ていただきたいと思っています。大学院へは、他大学や海外大学から来ていただくことも期待しています。

昨今、「アントレプレナーシップ」という言葉をよく耳にします。これは、新しいものを生み出し、失敗を恐れず挑戦する姿勢や能力を指す言葉であり、独創的な研究にチャレンジしたいという志とそれを実行する能力は、その一つだと私は捉えています。大学の教員や学者はアカデミックアントレプレナーと見なすことができますし、産業界をリードするにも、社会に貢献するのにもアントレプレナーシップは欠かせません。先進理工学部・研究科が、皆さんのアントレプレナーシップを伸ばす場となり、卒業・修了後に、アカデミアや産業界をリードする人材になってくれればうれしいです。