福田 貴斉 早稲田大学先進理工学部のキャンパスライフの詳細ページです。

共同原子力専攻 博士後期課程1年

福田 貴斉

FUKUDA Takanari

学生の意欲に全力で応えてくれる先生方がいます!

Q

博士課程進学のきっかけを教えてください。

中学2年生の時に、小林・益川両名のノーベル物理学賞受賞がきっかけで物理に興味を持ち、その後、早稲田大学の物理学科に進学しました。研究室配属の際には、物理学科で学んだ理論物理の知識を活かして直接社会に役立つ研究をしたいと考えて、修士課程から原子力工学の道に進みました。当初は、直接的な社会への貢献=就職という意識があり進学を迷いましたが、修士1年生の10月から3ヶ月間参加した国際原子力機関(IAEA)核データセクションでのインターンシップが博士課程進学の決め手になりました。

Q

その決め手とはどのような出来事でしたか。

国際機関での業務経験もさることながら、セクションで働く多様な国の方々から「原子力」や「国際機関で働くこと」、「博士号を取得して研究者になること」に対する考えを伺えたことですね。特に、スロベニアからインターンシップにきていた博士課程の学生と仲良くなり、「原子力の平和利用に貢献したい」と奮闘する彼の姿がカッコイイな、と思えてきて。この分野で博士号を取り、研究者として仕事をするというイメージが見えてきました。

実は、このインターンシップは指導教員の山路哲史先生が紹介してくださいました。海外経験を希望しているならば、と応募書類を添削し、推薦状を書いてくださいました。専攻の他の先生方も大学の代表としての応募を後押ししてくださり、学生の意欲や明確になっていない要望にも応えてくれる専攻なのだと感じました。

Q

専門を理学から原子力工学にシフトしたことで、苦戦したことありますか。

理学の世界は実証されることだけでなく、理論体系としてのエレガントさも重視されます。一方で工学は理論体系のエレガントさよりもその実用性を優先するので、その差に最初は少し戸惑いましたが、慣れてくると両方の面白さを感じられるようになりました。専攻の講義でも、「炉物理」という理学的な科目もあれば、「熱流動工学」という理学のアプローチでは現象が複雑すぎて太刀打ちできないものの、経験則を活用した工学的アプローチで課題を取り組む科目もあり、学問の視野が広がります。共同原子力専攻は東京都市大学との共同専攻のため、多くの講義は渋谷にあるサテライトキャンパスで受けることになります。都市大の学生と講義を受けたり実習に参加したりする機会があるのも、新鮮な刺激になっています。

社会のための研究としての原子力工学

Q

現在は、どのような研究に取り組んでいますか。

次世代の軽水炉(原子炉)と呼ばれる超臨界圧軽水冷却炉における、高レベル放射性廃棄物の減容について研究しています。現在のところ、高レベル廃棄物は地下300メートル以深に「地層処分」する方法が有力であるとされています。一方で、高レベル廃棄物から特定の原子核を除き原子炉で消滅させる処理(MA変換)を施すと、毒性継続期間や毒性レベルが下がることも分かってきています。MA変換には、衝突させる中性子のエネルギーなどが影響しますが、超臨界圧軽水冷却炉は現行の商用軽水炉よりも中性子のエネルギーが高いのでMA変換に比較的に適しているのではないかと考えています。シミュレーションを用いて、様々な条件下でのMA変換原子炉の特性や組成の変化などを解析しています。

Q

将来のキャリアについてはどのように考えていますか。

研究者を目指しています。原子力工学は産業と研究が比較的近いところにある分野であり、また、今後も発展の余地があるからこそ、その研究が社会から必要とされていると考えています。例えば近年ではエネルギー自給率の向上、エネルギーミックスといったキーワードのもと、小規模分散型電源システム構築の動きが活発にありますが、この流れに沿える小型原子炉といった形での原子力の貢献もあるのかもしれません。博士課程進学後は、海外の研究機関との共同研究も予定しています。世界中の研究者と手を組み、ときには競争しながら、社会のための原子力工学研究を進められるようになりたいと思っています。

聞き手・構成
武末出美(早稲田大学アカデミックソリューション)

※所属と学年はインタビュー当時のものです。

キャンパスライフTOPに戻る