共同先端生命医科学専攻 博士後期課程3年
高橋 彩来
TAKAHASHI Sara
課題意識を明確にもった社会人が様々な分野から集う環境
博士課程進学のきっかけを教えてください。
行政機関での医療機器開発に関わる業務経験を通して、博士課程で研究したいテーマを見つけたためです。修士課程では脳動脈瘤の血流解析・予測モデルを研究しており、そのまま博士課程に進学することも考えました。ですが、社会に出て世の情勢を自分の目で見て、そこから自分の研究テーマを見つけたい、見つかったら博士課程に進学しよう、という思いが強く、一度は就職する道を選びました。
専攻には医師の方も学生として在籍しているそうですね。
私も含め、企業の研究開発者、医師、コメディカル(医師以外の医療従事者)、行政機関の職員など、様々な業種の方が社会人学生として多数在籍しています。どの方も、博士課程で学びたいことや研究したいこと、博士号取得後のイメージを明確にもって進学してきています。カリキュラムとして設定されているチームでのディベートや研究発表の機会を通して、このような方々との人脈を築けるということが、共同先端生命医科学専攻の魅力のひとつかもしれません。
カリキュラムで印象に残っている科目はありますか。
「生物統計学特論/演習」では、その成り立ちから演習まで一貫して学ぶことができ、実用性の高い授業でした。また、「共同先端医療現場実習」では大学病院の小児病棟を訪問し、実際に小児用の人工心臓を装着している子供たちのご家族や、治療に関わる医療関係者にご意見を伺うという、貴重な機会をいただきました。医療機器を開発してみる、という課外授業もあり、東京女子医科大学で行われている手術を何度も見学させていただき、チームで医療機器を考案したのも、大変良い経験になりました。博士課程のみで30単位を取得する必要があるため、かなり忙しいのですが、それを差し引いても期待以上の学びを得られたと感じています。
小児用医療機器の開発促進に貢献したい
博士課程ではどのような研究に取り組んでいますか。
小児用の医療機器開発の促進です。症例数が少なく市場規模が小さい上に、成人用よりも多品種を用意しなければならないことなどから企業が開発に乗り出しづらく、結果として小児用医療機器の開発が進まない、という世界的な課題があります。公的には各国で小児用医療機器開発促進に向けた取り組みや、国を超えたワーキンググループ等での議論が進められていますが、この課題に自分なりの視点で取り組みたいと考え、研究テーマとしました。
具体的には、日米の事例を中心に、どのような要素があれば開発促進につながるか、を調査しています。たとえば米国では、小児用医療機器開発を促進するために法律が制定され、開発費用を援助したり、承認するための基準を下げたりする取り組みが実施され、一定の成果をあげています。調査だけでなく、修士の頃に学んだ流体解析技術を応用した実験等も行い、様々な観点を踏まえた示唆・提案をまとめることができれば、と考えています。
将来のキャリアについてはどのように考えていますか。
アメリカや欧州の医療制度について、各国の行政に入り込んで学ぶ機会が得られたら理想的ですね。各国の歴史や文化的背景もあり、規制や保険体制に対する方針や意思決定までの手順・スピードなどが日本とは全く異なります。外から眺めているだけでは分からない実際知り、良いと思う手法や方策を日本でも応用できれば、と考えています。海外の行政機関では博士号取得者が多数を占めますので、そこで肩を並べるためにも、博士号は大切なファクターですね。
武末出美(早稲田大学アカデミックソリューション)
※所属と学年はインタビュー当時のものです。