小川 斐女 早稲田大学先進理工学部のキャンパスライフの詳細ページです。

生命理工学専攻 博士後期課程2年

小川 斐女

OGAWA Ayame

好奇心を起爆剤に、最先端の研究を

Q

博士課程進学のきっかけを教えてください。

修士課程に進学後、学外の研究機関との共同研究や、国際学会での研究発表を通して世界中の研究者たちと議論する経験を重ねるうちに、「もっと知りたい、もっと試してみたい」と思うことが増え、博士課程に進学したいと思うようになりました。当初、修士課程修了後は就職することを考えていましたので、この意識の変化は予想外でしたね。所属研究室だけでなく周囲の研究室の先輩方にも色々と聞いて回り、主体的に研究を進められる可能性を広げる手段なのだと納得して、博士課程への進学を決めました。

Q

実際に進学してみて、いかがでしょうか。

修士課程の頃と比べると、研究室内での意識や研究に対する姿勢が変わりました。研究室全体の様子をみながら後輩を指導する機会が増えましたが、当時の自分を振り返って、身につまされることもありますね。また、研究成果を出し、まとめるということを意識するようになりました。実は今まさに、研究成果を論文にする生みの大変さを味わっているところです。

仮説通りの実験結果が得られないこともありますが、先輩から言われた「変動すると思っていた結果が“変動しない”ということも、大事な結果である」という言葉を思い起こしながら、日々研究に取り組んでいます。

Q

研究設備も充実しているそうですね。

研究室がある先端生命医科学センター(TWIns)は、2008年に設置された、比較的新しい研究教育施設です。細胞培養や動植物の飼育関係施設もあり、また研究室単位では購入が難しい分析機器や顕微鏡がずらりと並んでいます。セルソーターや高機能質量分析器、共焦点レーザー顕微鏡など、貴重な設備を自由に使える環境にいますので、その意味でも、社会に還元できる研究成果を出せれば、と考えています。

メダカの白血球造血因子の機能を解明する

Q

現在は、どのような研究に取り組んでいますか。

メダカの白血球(好中球)について、造血で必要となるタンパク質の同定と、その機能について調べています。メダカは様々な飼育環境に適応する能力があり、世代交代も早いので、環境応答の実験や遺伝子組み換え個体、ゲノム編集個体を用いる実験での使用に適しています。また、哺乳類や鳥類、両生類に比べて白血球の種類が少なく、どのように免疫系がはたらいているのか未解明な部分が多いです。血液学の分野ではヒトやマウス、ゼブラフィッシュがよく研究されていますが、メダカを扱っている研究者はほとんどいません。そのため、採血方法や血球のカウント法などの基本的な研究手法から新規に構築する必要があります。新しく研究手法を確立していくことは困難なこともありますが、面白いところでもあります。

メダカの造血研究を進めることができれば、基礎生物学への貢献になるとともに、他の動物種と比較した研究にも活用できるようになります。造血の普遍性・多様性を理解するには多くの種を比較することが重要であると考えられています。メダカのモデル動物としての扱いやすさを武器に、様々な動物種と比較し、新たな知見を得たいですね。

Q

将来のキャリアについてはどのように考えていますか。

産業界で人の役に立つものの研究に携わりたいと考えています。指導教員の加藤尚志先生の言葉をお借りすると、「医師は目の前にいる患者を治そうと全力を尽くすが、救える人数に限りがある。研究者は患者を直接治療することはできないが、研究成果を未来の多くの人のために役立てることができる」のです。大学浪人時代に手術を受けた経験から、ヒトの医療に役立つことがしたいと生命科学の道に進みましたが、そのスタートラインに立っている状況なのではないかと思います。

聞き手・構成
武末出美(早稲田大学アカデミックソリューション)

※所属と学年はインタビュー当時のものです。

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