張 育豪 早稲田大学先進理工学部のキャンパスライフの詳細ページです。

ナノ理工学専攻 博士後期課程2年

張 育豪

CHANG Yu Hao

世界トップレベルの材料工学を思う存分学べる

Q

博士課程進学のきっかけを教えてください。

材料工学を専門的に学んで学位を取るために日本に留学しましたので、博士課程への進学は当初から予定していました。研究はパズルに似ていると思っているのですが、悩んで試行錯誤した後にピースがはまった瞬間は、本当にうれしいものです。試行錯誤できるということ自体が、博士課程学生の特権だと思います。

Q

なぜ早稲田を選んだのでしょうか。

カナダの大学で材料科学を学んでいたのですが、混合絶縁膜材料の最適配合を探索する産学連携プロジェクトに携わったことから、より実践的な材料工学に興味をもちました。日本は材料工学の分野では世界トップレベルですし、私の母国である台湾とも近いため、日本の大学院に行こうと決めたのです。日本語学校に通っている1年の間、2010年ノーベル賞受賞により注目度が上がっていた炭素素材をベースに様々な大学を調べていたところ、「ダイヤモンド」というキーワードに衝撃を受け、川原田洋研究室の門をたたきました。

Q

実際に進学してみて、いかがですか。

ナノ理工学専攻では基礎物性から電子応用までを包含して学べるようにカリキュラムが組まれています。そのため、学部で学んできた材料科学と研究テーマである電子デバイス工学とを結びつけるきっかけを「応用電気化学特論」や「電子物理化学演習」などから得ることができました。工学的な知識や見方を身に着けたいと、様々な科目を受講し多くの質問を繰り返しましたが、どの先生方も懇切丁寧に教えてくださり、本当にありがたかったですね。英語で行われている講義もあり、理解が進みました。逆に、川原田先生は当初から留学生には日本語で研究報告させるというスパルタ方針(笑)でしたので、日本語もかなり鍛えられています。

ステンレス容器とダイヤモンドトランジスタを組み合わせた新しいpHセンサ

Q

現在は、どのような研究に取り組んでいますか。

ダイヤモンドトランジスタを使ったpHセンサを研究しています。pHセンサは、ガラス電極内部液として塩化カリウムを用いたものが一般的ですが、損傷リスクがあるため代わるものが求められています。一方、ダイヤモンドトランジスタはその安定性から、溶液中での直接使用が可能です。例えば、私の好きなビールの製造工程では、損傷リスクを避けるためにサンプルを採取し、pH測定後に廃棄しますが、ダイヤモンドトランジスタpHセンサで、廃棄のない工程を実現できるかもしれません。

研究を開始した当初は、ダイヤモンドトランジスタのゲート表面に吸着させる材料を変え、pH感度を高めることに取り組んでいました。最近は、ガラスの代わりにステンレスを用いたステンレス電極とダイヤモンドトランジスタを組み合わせた新しいpHセンサの開発に取り組んでいます。これは食品製造工程でのステンレス容器をそのまま電極として利用する画期的なアイディアです。食品検査はもちろん、火鍋などの料理にも応用できるでしょう。

Q

ステンレスを活用する研究では、行き詰まったこともあったとか。

ステンレスを電極として活用するための最適な手法が思いつかず、研究室内にもあまり知見がありませんでした。そんな時、課程と並行して履修を始めた卓越大学院パワー・エネルギー・プロフェッショナル育成プログラム(PEP)に参加していた他大学・異分野の学生とのディスカッションを通して、新しいアイデアを思い付いたのです。PEPをきっかけとして、共同研究の話も持ち上がっています。

Q

将来のキャリアについてはどのように考えていますか。

日本の企業で、センサ開発などに携わりたいと考えています。さらに将来的には、台湾と日本とが協同するプロジェクトを立ち上げたり、関わったりできれば、最高ですね。台湾と日本はどちらも海に囲まれた島国ですから、工業的応用を考える際に共通する観点があるのではないか、と思っています。両国に貢献できる人材になりたいと思います。

聞き手・構成
武末出美(早稲田大学アカデミックソリューション)

※所属と学年はインタビュー当時のものです。

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