徳田 貴昭 早稲田大学先進理工学部・研究科出身者の社会での活躍を紹介しています。

グーグル株式会社
パートナーソリューションズ
パートナーテクノロジーマネージャ

徳田 貴昭

Tokuda Takaaki

略歴

1985年生まれ。2010年、先進理工学研究科電気・情報生命専攻博士課程を修了後、グーグル株式会社に入社。プロダクトサポートを経て、2013年から現職。
電気・情報生命専攻、松本隆教授の研究室で言語分析モデルを研究した徳田 貴昭さん。グーグルに入社後は、インパクトあるプロダクトを世の中に送り出すべく、日々奮闘していらっしゃいます。

インパクトのあるプロダクトを世の中に送り出すジェネラリストに

Q

現在はどのようなお仕事に携わっていらっしゃるのでしょうか?

グーグルではGoogle Playというデジタルコンテンツ配信サービスを提供しています。私はその中で「Google Play ブックス」に書籍配信を検討したり、すでに配信されているパートナー企業に対して、営業やエンジニアなどを含めたチームを編成し、サポートしています。パートナー企業が抱える課題に対して、一緒に解決手法を検討しながら、最も良い策を講じていくことが求められます。パートナー企業は勿論のこと、同僚や関係部署との信頼関係を築くため、日々のコミュニケーションを大事にしています

中学生の頃に、シンプルで先鋭的なグーグルのプロダクトに出会って以来のファンで、自分でもそのようなインパクトあるプロダクトを届けたいと思っていました。ですから、今こうしてその一端を担う仕事ができていることはとてもエキサイティングな経験です。プロダクト部門には、私では思いつきもしないようなアイデアを持つ人、びっくりするぐらい美しいプログラムを書く人など、スーパープログラマが多くいます。そのような中にあって、自分が活きる仕事は何かと考えるようになりました。その結果、人と話すことが好きでしたので、対話の中から課題を見つけ、分析して共に解決を図っていくことが向いているのではないかという考えに至り、現在の業務に異動したのです。プロダクト部門に限らず、グーグルには世界中から多くの有能な人材が集っています。彼らのやり方を学び、ジェネラリストとしての力を蓄えていきたいと考えています。新しい企画を始めるときに、迷うことなく「やります」と即答できる、また、即答すると思ってもらえるような人間になりたいですね。

Q

グーグルのファンだった、とのことですが、就職を意識して学科も選ばれたのでしょうか?

グーグルには強い衝撃を受けたものの、当時はまだ就職自体はあまり意識していませんでしたね。高校生の頃は国語や社会など、いわゆる文系科目を学ぶことも好きでしたので、文系進学も考えました。また、付属校の早稲田大学本庄高等学院に通っていましたので、早稲田大学以外の選択肢は考えていませんでした。私の父が工学の博士号を持っていたこともあって、最終的には理工系を選択しました。当時、AIBOやASHIMOなど、ロボット技術と情報通信技術の進歩が、わたしたち一般人にも「お披露目」されるようになってきており、特に、情報通信技術に興味を持ったのです。また、学科名が示す通り、幅広く用意されている科目群から興味のある専門を絞りこんでいける、電気・情報生命工学科に進むことにしたのです。

入学後の授業で印象に残っているのは「信号処理」でしょうか。音声認識や画像処理など、普段何気なく利用していた技術には、フーリエ変換 (その式は高校生から学部1年で学ぶ数学の範疇で記述されます) という周波数領域への変換が活用されていることを知ったのです。それまで何の役に立つのかと思っていた基礎知識と、現実世界とがつながった瞬間でした。この授業を担当されていたのが、その後お世話になる、松本隆 教授でした。私は、授業で分からないことがあると研究室を訪ねていました。先生だけでなく、ティーチングアシスタント(TA)をされていた研究室の先輩方とも気軽に話し、研究室の雰囲気を知ることができましたので、迷うことなく卒業研究の配属先希望を出すことができましたね。

Q

研究室ではどのような研究に取り組まれましたか?

研究室に入ると、より具体的に「HOW」の部分を学ぶことになります。例えば、動画から自動的に「人」と「それ以外(背景や動物など)」とを区別し、さらにその人が誰であるかを予測する方法。あるいは、脳波から有効な意思を検出するための分析方法などです。松本研究室では、このように具体的な課題を設定し、それを解決するためのアルゴリズム(手法)を研究していました。特に私が取り組んだのは、ベイズ (Bayes) の枠組みにおいて、ディリクレ過程(Dirichlet Process)を言語モデルに適用した「WEBニュースを自動でカテゴライズする手法の開発」でした。私たち人間は、動詞や固有名詞、同音意義語、あるいはその文章のカテゴリーなどを前後の単語・文章から判断して捉えています。しかしコンピュータは勝手に判別することはできませんから、蓄積されていくデータを分析して最適値を出す(学習する)ためのフロー(プログラム)を作り、それを実行させるのです。

学部生の間は多くの人と接することができるカフェスタッフなどのアルバイトを楽しんでいましたが、大学院生になると、自分の専門を活かしたプログラムのアルバイトをするようになりました。研究室では学術的に新しい手法の開発を突き詰めながら、アルバイトでは実際問題に適用する力を磨けたと思います。卒業研究の1年間だけでは自分の専門性を突き詰める部分が足りないと感じましたので、修士課程まで進み、引き続き同じテーマで研究を進めました。修士課程に進んだことで、学会発表や論文を執筆して成果をまとめるという経験を積めましたし、英語力も高めることができました。先にお話しした通り、グーグルではグローバルプロジェクトが日常ですから、英語でのコミュニケーションは必須です。数週間~数ヶ月の米国の本社滞在などは珍しいことではなく、現地では勿論全て英語で業務を行います。

図 コンピュータが自動的にデータをカテゴライズした例

Q

最後に、後輩たちにアドバイスをお願いします。

「何でもやってみること」ですね。多くのことにチャレンジする中で、自分にどのようなことが合っているのか、探すと良いのではないでしょうか。私自身、これまで多くのことに挑戦しながら、少しずつ自分の進む方向を決めてきたように思いますし、今でも「やってみる」精神は継続しています。また、早稲田に集まる学生は個性豊かで、各々の意見をきちんと持っています。自分ひとりで考えて良いアイデアだと思っていても、見方が変われば異なる意見も出てきます。それを突っぱねるのも、受け入れるのもまた、自由です。そのような環境に身を置けるということが、早稲田の最大の魅力だと思います。

図 のれんの先は談話スペース。東京オフィスは「和」のモチーフが多用されている。金曜日は”TGIF (Thanks God, It’s Friday)”ということで、社内懇親会が開かれることも。

Q

ありがとうございました。

聞き手・構成

武末出美(早稲田総研イニシアティブ)

※所属はインタビュー当時のものです。

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